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解説「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷」(5)
「救援」406号(救援連絡センター、2003年2月)
ブッシュの戦争犯罪を裁こう(1) 前田 朗(東京造形大学)
戦争国家・殺人国家
イラクの「大量破壊兵器」に対する査察の報告が一応出た現在、国連安保理では戦争ではなく査察延長論が強まっているが、アメリカは単独でもイラク攻撃を始める姿勢を崩していない。大量の核兵器や、デイジーカッター、クラスター爆弾、バンカーバスターなどの兵器を保有し、実戦で投下して殺戮を繰り広げながら、査察を一切拒否しているアメリカが、イラクや朝鮮に対する査察を唱えること自体が噴飯物といわなければならない。
第二次大戦以後の約半世紀を通じて世界各地で、特にアジア各地で戦争を遂行し、大規模な戦争犯罪を犯してきたのはアメリカである。ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下は人道に対する罪にあたるであろう。朝鮮戦争に際しては、朝鮮の主要都市に対する激しい無差別爆撃が行われた。近年、老斤里事件が発覚したように、米軍は韓国の一般民衆も殺害していた。ベトナム戦争については語るまでもないだろう。カンボジア爆撃も大規模であった。そして「湾岸戦争」におけるイラクの都市爆撃、ユーゴスラヴィア爆撃に続いて、最新の戦争犯罪はアフガニスタンへの爆撃として実行された。約半世紀間に米軍によって殺害された被害者の数はまったく不明である。つい最近のアフガニスタン爆撃の民間人被害者の数さえ誰も数えようとしない。
アメリカの戦争政策は、時には「国連軍」の体裁をとったり、時には国連決議を利用したりすることもあるが、イラク攻撃の執拗な追求に見られるように、国連を尊重すのではなく、御都合主義的に利用しているだけである。
アメリカの戦争犯罪の罪状は数知れない。第一に、侵略である。第二に、しばしば体制転覆、暗殺、誘拐が活用された。第三に、大量爆撃による難民化は人道に対する罪である。第四に、民間人や民間施設に対する攻撃である。ダム、上下水道、学校、教会など無差別に爆撃してきた。第五に、違法な大量破壊兵器の使用である。「湾岸戦争」において投下された劣化ウラン弾がばらまいた放射能による被害はイラクに惨状をもたらしている。第六に、捕虜の虐殺や虐待である。カライジャンギ捕虜収容所における大量の虐殺。グアンタナモ基地における捕虜虐待。
戦争国家アメリカが、国内においては多数の死刑囚を抱える「殺人国家」(オースティン・サラ)であり、テロとの闘いを口実にした人種差別国家であることも改めて指摘するまでもない。
21世紀の平和と安全にとってもっとも危険な「癌」がアメリカである。にもかかわらず、国連はアメリカの鼻息をうかがうことしかできない。日本政府はアメリカの戦争に便乗して軍事化と私益追及に励んでいる。
国家が国際法を守らず、国際機関も平和と安全の途を見失っているいま、民衆自身が声をあげて、国家に国際法を守らせる必要がある。現代国際法はそれ自体、帝国主義国家間の約束事で成り立っているにすぎないが、それでも国際人権法や国際人道法は人道と文明を柱にした「普遍的な規範」をつくりあげてきた。国際人権法・人道法を守れば、アメリカのやりたい放題の戦争はできない。人権と人道の原則を国際社会に復権するために民衆の平和運動をさらに活性化させる必要がある。
民衆法廷の提案
国家に国際法を守らせ、国際機関に平和への責任を想起させ、イラクに対する戦争に反対し、日本の参戦や軍事化に反対するための運動として、昨年10月、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷運動が始まった。実行委員会の特別顧問には「湾岸戦争」における父親ブッシュの戦争犯罪を裁く民間法廷を開催したラムゼー・クラーク(弁護士、元アメリカ司法長官、国際行動センター代表)が就任した。実行委員会は、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷規程を公表し、「ブッシュに対する起訴状・素案」を作成した。法廷開催は本年12月、東京を予定している。
法廷ではブッシュの戦争犯罪を立証する証拠を積み上げなければならない。そこで四次にわたるアフガニスタン戦争被害調査団を派遣して、難民や戦争被害者の取材を行なってきた。2月末から第五次の調査団が行く予定である。調査結果は、昨年12月から始めた一連の公聴会で報告される。公聴会は法廷のための証拠の収集・分析・記録の場であり、ほぼ毎月のように全国各地で開催される。第一回は12月15日に東京・新宿、第二回は1月19日に大阪・中之島、第三回は1月22日に東京・渋谷で開催された。公聴会には、戦争被害調査団からの報告(口頭、ビデオ、写真)、アフガニスタンで活動してきたNGOやジャーナリストからの報告、国際法学者による戦争犯罪論の考察、「九・一一」の謎についてのジャーナリストからの報告、自衛隊参戦の違法性についての弁護士からの報告、在日アフガニスタン難民に対する日本政府による人権侵害など多彩で多面的な証拠が積み上げられた。
戦争犯罪を裁く民衆法廷は、ベトナム戦争に関するラッセル・アインシュタイン法廷、「湾岸戦争」に関するクラーク法廷、NATOのユーゴ空爆に関するクラーク法廷、朝鮮戦争に関するコリア戦犯法廷などが知られる。日本に関連するものとして、原爆法廷が知られるが、比較的最近では、アジア民衆法廷運動や日本軍「慰安婦」問題に関する女性国際戦犯法廷が開かれている。民衆法廷は民衆が自主的に開催する法廷であり、国際法上の位置づけがあるわけではないが、女性国際戦犯法廷は国際法の理論水準を完全に充たして準備され、民衆法廷の新たな沃野を切り拓いたので、今後の民衆法廷は女性国際戦犯法廷に学びながらつくりあげていくべきであろう。
民衆法廷は、国家権力や国際機関の権威があるわけではなく、判決に拘束力もない。被告人を出廷させることもできない。それでも民衆法廷を開催するのは、国家の権威による正義ではなく、民衆の継続的な努力と議論の中で顕になる正義をめざしているからである。正義の名において裁くことの危うさを一方で配慮しつつ、民衆が国際法の世界に介入していく理路を整備していきたい。
第4回公聴会は2月23日に神戸の兵庫県私学会館で開催を予定している。
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