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解説「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷」(4)
国際平和を求める民衆運動−戦争犯罪を民衆の力で裁こう
(「中日新聞」(東京新聞・北海道新聞・西日本新聞)2003年2月17日夕刊)
前田 朗
圧倒的に大規模な大量破壊兵器を保有し、ふんだんに空爆を行なってきた大国が、あるかないかも定かでない小国の大量破壊兵器を非難し、戦争の口実探しに躍起になっている。国連決議がなくても一国の独自判断で攻撃を行ない、政権を崩壊させるなどという国際法無視の発言がまかり通っている。こんな大国の横暴に直面して、国際社会は理性的判断を引き寄せることもできずにいるようだ。
ブッシュ米大統領の戦争意欲が一気に現実化したのは「九・一一」からのことだが、この時、国連などの国際社会はブッシュ大統領の独走を阻止しようとしなかった。国際法上の根拠がないのにアフガニスタンに一方的に侵略的行為を仕掛け、大量の難民を生み出し、数知れぬ民間人の命を奪い、戦争捕虜を虐殺したり虐待したりするという米軍の戦争犯罪を、国連は追認してしまった。NGOの批判にもかかわらず、米軍の責任は不問に付された。
しかし、時が過ぎようとも、誤りは正されなければならない。アフガンにおける数々の戦争犯罪の事実を調査し、その責任を追及することによって、地に墜ちた国際法を復権させ、平和と人道の法則を蘇らせる必要がある。こうした思いの民衆が集まり、喧々轟々の議論の末にアフガニスタン国際戦犯民衆法廷(ICTA)の運動を立ち上げた。
かつてベトナム戦争におけるアメリカの戦争犯罪を暴露した「ラッセル・アインシュタイン法廷」や、「湾岸戦争」におけるアメリカの戦争犯罪を解明した「クラーク法廷」、日本の戦争犯罪を裁いた「女性国際戦犯法廷」など、民衆法廷には豊かな蓄積がある。ICTAはその蓄積に学び、ブッシュ大統領を被告人として訴追し、その戦争犯罪を徹底的に解明するために発進した。
「クラーク法廷」を主宰したラムゼー・クラーク(弁護士、国際行動センター代表)がICTA実行委員会の特別顧問に就任した。実行委員会共同代表は、今のところサラ・フランダース(国際行動センター)と私だが、さらに拡充する予定である。実行委員会には、平和運動にかかわってきた民衆がボランティアで参加している。
それでは、なぜ日本で開催するのか。米英軍のアフガン攻撃には日本が給油という形で「後方支援」を行った。米英軍の輸送燃料の四〇%を日本が提供したといわれる。アフガンでは膨大な数の民間住民が殺されたが、日本社会構成員の税金によって命を失ったのである。戦争協力を止められなかった民衆の責任としてICTAを日本で開くことに意義がある。
昨年12月15日に東京・新宿で第一回公聴会が開催された。ゲーリー・ウィルソン(国際行動センター)が、アメリカにおける90年代以後の反戦平和運動の発展を紹介。伊藤成彦(中央大学名誉教授)は、「九・一一」以前と以後をトータルに捉える歴史認識を具体的に提示した。
第二回公聴会は1月19日、大阪・中之島で開催され、ICTA実行委員会によるアフガン現地調査報告に続いて、空野佳弘(弁護士)は、アフガン空爆開始とともに日本政府に身柄拘束された在日アフガン難民に対する人権侵害を報告。1月22日に東京・渋谷で開かれた第三回公聴会で、内田雅敏(弁護士)は、自衛隊の戦争協力が憲法を破壊する暴挙である点を指摘。清水雅彦(和光大学講師)は有事法制が市民に戦争協力を強制し、アジアの民衆を「殴る側」に固定させることを明らかにした。
これら公聴会は、戦争犯罪の証拠を収集し、記録に残す場である。アメリカの軍事・外交戦略、アフガン攻撃の背景や実態、戦争被害の事実や被害者の生活状況を調査し、国際法における侵略の罪や人道に対する罪を解明し、それらを証拠として記録していく。
ICTAは、日本からアジアやアメリカの反戦平和運動にも呼びかけ、民衆運動によって「戦争中毒」に陥った国家に国際法を守らせる法廷運動である。
国際法はもともと主権国家同士の約束事であり、国際政治のメカニズムの中で変容したり歪曲されてきた。とはいえ、国際法は人道や文明といった普遍的な価値を掲げており、厳密に守れば戦争ができない程度には発展してきた。
大国は国際法を平然と無視しながら、小国に対しては国際法の遵守を求める。しかし、小国が国際法を守らなければならないのと同じように、大国にも国際法を守らせなければならない。国連がそうした声を失いつつある現在、民衆の平和運動こそ国際人道法・人権法の旗を敢然と掲げる必要がある。
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