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解説「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷」(2)

「青年法律家」382号(2002年12月、青年法律家協会弁護士学者合同部会)
ブッシュの戦争犯罪を裁く民衆法廷運動にご協力を 前田 朗(東京造形大学)

被害者は女性と子ども

 九月上旬、私たちはカブールで戦争被害者の取材を行った。
 パキスタンのペシャワールから国境を越えジャララバードを経て、カブールへの道は遠かった。カブールはパキスタンの町とは違った様相を呈していた。20年にわたる戦争の歴史がカブールの町そのものである。カブール南西部にあるカブール大学前の文教地区は内戦によって見事なまでに徹底的に破壊されていた。四番町と三番町という町は、崩落したビル、潰れた家、倒壊した壁の連続である。崩壊した町並みに人々が立ち尽くしている。歴史の残酷さに痙攣を起こしているかのような無残な光景だ。
カブール北部のベマル地区では、B52が投下した爆弾の直撃で家が完全崩壊し、夫や家族八人を亡くしたハザラ人のアリファさんに取材した。アリファさんの夫、第一夫人、その子どもたち八人が一瞬にして亡くなった。残された子どもを抱えながら苦労している。夫を亡くした女性はアフガンでは社会的地位を得られないため、NGOの援助で辛うじて食べている状態だ。
隣家も崩壊した。そこで娘と息子を亡くしたサヒーブさんは墓地を案内してくれた。墓地には墓石が並んでいるが、そのうち緑の旗が立っているのは戦争犠牲者のお墓である。アリファさんの家族とサヒーブさんの子どもたちのお墓十基が緑の旗に囲まれて沈黙していた。
カブール西部の住宅地にはクラスター爆弾が投下された。ぶどうの房になぞらえる爆弾集合体・クラスター爆弾のピースを拾った子どもたちが負傷した。イサヌラーくんは左足に重傷を負った。小学校の隣にタリバンが出入りしていた小さな建物があったので、そこを狙ったのだろうが、あたりは住宅地である。イサヌラーくんの視線はあまりに哀しい。
 私たちが取材した戦争被害者は、すべて民間人であり、アリファさんの夫を除いてすべて女性と子どもたちである。
カブールの北の町カラバーでは、難民状況について聞いた。カラバーのトミラ地区には二割ほどのタジク人と八割のパシュトゥン人が居住している。タリバンの建物があったため空爆が始まり、モスクが破壊され60人の人々が亡くなった。危険になったのでタジク人は徒歩で北のパンシール渓谷に逃げた。途中の谷に落ちて亡くなった人もいる。パシュトゥン人は南へ逃げた。カブールへ行ったり、さらにパキスタンへ難民となった人もいる。大量の難民化は人道に対する罪にあたる可能性がある。
そもそも米英軍のアフガン空爆には国際法上の正当化理由がない。報復戦争は自衛権の論理では説明できない。国連憲章にも正当化理由がない。安保理決議は空爆を認めてはいない。アメリカはアルカイダ犯行説を主張したが、何一つ証拠を示していない。テロリストをかくまっているから爆撃できるのなら、ペルーは日本を爆撃していいことになる。こうした違法な空爆によって民間人の被害が生じたが、誰も死者の数すら数えようとしない。9.11の被害者の数には興味を持っても、アフガンの死者は無視され続ける。

民衆法廷の提唱

 2月17日、平和運動の若者が開いた集会「アフガニスタンに平和と正義を!」において、私はブッシュの戦争犯罪を裁く民衆法廷を提唱した。ベトナム戦争におけるラッセル法廷、湾岸戦争におけるクラーク法廷、女性国際戦犯法廷、コリア戦犯法廷の経験に学びながら、国家が国際法を守らないとき、民衆が主体となって国際法を復権する試みである。
 そのための準備として、3月に第一次戦争被害調査団がパキスタンへ行き、ペシャワール周辺のアフガン難民キャンプで調査を行い、アフガン戦犯法廷準備委員会編『ブッシュの戦争犯罪を裁く』(現代人文社、950円+税)にまとめた。次いで7月末から8月にかけて第二次調査団がフォロー・アップを行った。そして、9月上旬に第三次戦争被害調査団はアフガニスタンに入り、カブールとカラバーで調査を行った。
 現地調査を踏まえて、私たちはようやく具体的にアフガニスタン国際戦犯民衆法廷(ICTA)の呼びかけを始めることにした。 10月5日に東京、6日に大阪でアフガニスタン戦犯法廷キャンペーン集会を開催し、10月20日、ICTA開催を目指す実行委員会を発足させた。アメリカ元司法長官で湾岸戦争に際して父親ブッシュ大統領の戦争犯罪を裁く国際法廷を呼びかけ開催したラムゼー・クラーク(弁護士、IAC・国際行動センター)が特別顧問である。共同代表には今のところ、サラ・フランダース(IAC)と私が就任している。事務局は、法律には素人の平和運動グループが結集した。そして、呼びかけ人や賛同人を募り、2003年12月に開催予定の法廷に向けて一年間余の<法廷運動>を開始した。キャンペーン集会は11月24日に京都、12月6日に神戸と続けている。

ICTA構想

 ICTA法廷運動は、 ラムゼー・クラークの公聴会方式を発展的に取り入れていく。すなわち、各地で連続公聴会を開催していく(当初は「同時多発法廷」と称していた)。一発方式の大集会ではなく、全国各地で公聴会を準備・開催し、NGOやジャーナリストからの情報を収集しながら、法廷の証拠を積み上げていく。平和運動の一環としての法廷運動である。そのために「公聴会ガイドライン」を作成した。
 また、ICTA法廷運動は、女性国際戦犯法廷にも大いに学んでいく。国際法を的確に採用して、「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷規程・草案」と「ブッシュに対する起訴状・草案」を和文と英文で用意した。戦争におけるジェンダー暴力も重要テーマである。
 ICTAの意義について私は次のように考えている。
 まず、ICTAは、民衆が主体となって呼びかけ、準備・開催する<民衆法廷運動>である。法律家の協力は不可欠であるが、法律家にお任せになってしまわないように、実行委員会は平和運動グループからのボランティアで構成している。
次に、ICTAは、<反戦平和運動の一環>である。自衛隊の空中給油(参戦)を阻止し得なかった日本社会の平和運動の責任として開催する。私たちは勝手にアフガニスタン人民を代弁することはできない。被害女性や子どものためだけに行う法廷ではなく、私たち自身の責任を問い直す運動である。
最後に、日本から発信して<アジアやアメリカの平和運動>と連帯していく。すでにIACの協力を得られることになっている。アメリカとアフガンの和解とアフガンの被害者の支援をしている「グローバル・エクスチェンジ」からも協力を得ている。アメリカで反戦決議を行ったバークレー市議会の協力も要請している。

法廷運動始動

  こうして走り始めた法廷運動。12月15日には第一回公聴会(東京)を開催し、その後、各地で連続的に公聴会を開催していく。公聴会では、アフガニスタン現地調査の報告、NGOやジャーナリストからの報告、国際法学者や政治学者の講演を受けていく。その記録を整理して、法廷の証拠として積み上げていく。民衆と専門家の協力によって、アメリカの軍事戦略・外交戦略・石油戦略、自衛隊参戦の詳細な経緯、人道に対する罪や侵略の罪とは何か、戦争犯罪とは何か、米軍基地と性暴力、在日のアフガニスタン難民の状況などを具体的に明らかにしていく。民衆主体の戦争被害調査活動を柱にすえて、出版物やインターネット上の関連資料収集、NGOやジャーナリストの発掘、一年間にわたる全国各地での公聴会を組織していく。公聴会へのアジア各国からの参加、アメリカからの参加、アフガニスタン現地からの証人の出廷など、多彩な試みを繰り広げていく。各地で報告会、講演会、写真展、ビデオ上映会なども続ける。この12月30日には第四次調査団が出発する。
ICTA運動には多大の予算が必要である。私たちは、内外の平和運動・人権運動に呼びかけて賛同団体・賛同人を募っている。そのために現在<呼びかけ人>をお願いしている。呼びかけ人はすでに百人を超えたが、まだまだスタートしたばかりである。青法協会員の皆さんも、国際法や政治学の分析・理論でご協力いただくとともに、呼びかけ人としてこの運動を支えていただきたい。

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「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷」実行委員会 The International Criminal Tribunal for Afghanistan